寝坊は、社会のせいだ
it’s not you. it’s 9am.
japan oversleepers society
スリープコンサートに参加したい20晩のうち、全員がいっせいに
眠っていたのは、18分でした。
タンザニアのハッザの人たちに活動計をつけ、20晩ぶんの眠りを記録した研究があります。装着していた大人(多い日で22人)が全員そろって眠っていたのは、20晩あわせて18分ぶんでした。夜のあいだ、たいてい8人ほどが起きている計算になります。
見張りを決めていたわけではありません。ただ、眠る時間がずれていた。それだけで夜が埋まっていました。眠る時間がばらけていること自体が群れを守る仕組みだったのではないか——研究者たちは、そういう仮説を立てています。証明されたわけではありません。
出典: Samson DR, Crittenden AN, Mabulla IA, Mabulla AZP, Nunn CL. “Chronotype variation drives night-time sentinel-like behaviour in hunter–gatherers.” Proc R Soc B. 2017;284(1858):20170967. doi:10.1098/rspb.2017.0967 ※活動計をつけていた成人(同時に最大22人)が対象で、キャンプ全員ではありません。18分は1分単位の記録18個の合計で、連続した18分間ではありません。著者自身は「見張りをしていた」ことを直接観察したわけではなく、仮説として提唱しています。
あなたが朝に弱いことは、
群れが夜を埋めていたやり方の、まだ残っている一部かもしれません。
日本の時計が東経135度に揃えられたのは、
1886年のことです。
明治19年の勅令で東経135度の時刻が日本標準時と定められ、1888年に施行されました。それまで、正午とは「太陽がいちばん高くなった時刻」のことで、土地ごとに違っていた。全国の時計が同じ数字を指すようになって、まだ140年ほどです。(正確には、1896年から1937年までは八重山・宮古に東経120度の西部標準時があり、下の図の与那国はそのあいだ、いまより時計と太陽が合っていました。)
時計が9時を指しているとき、体が浴びている光は、根室ではもう9時42分のもので、与那国ではまだ8時12分のものです。同じ「朝9時」に集まっている人たちは、まったく違う朝にいます。
時刻を揃えるというのは、ずれを直すことではありませんでした。
ずれを、なかったことにしただけです。
ただし、ここで見た土地によるずれは、いちばん離れていても1時間半です。人と人のあいだにあるずれは、これよりずっと大きい。
日本標準時: 明治19年勅令第51号「本初子午線経度計算方及標準時ノ件」、明治21年1月1日施行。 南中時刻は各市の経度から算出(東経135度との差1度あたり4分)。
これが、休みの日の起床時刻の分布です。
米国の生活時間調査(5万3689人)で報告された値から、休みの日の起床時刻の分布を再現したものです。日本ではなく米国の調査で、日本人の値ではありません。点は人数そのものではなく、分布の形を表しています。この形が切れ目なく続いていることは、22万人規模の別の調査でも報告されています。始業時刻をつまんで動かしてみてください。黄緑に染まった人が、自然には間に合わない人です。
自然には間に合わない人 —
出典: Roenneberg T, et al. Biology. 2019;8(3):54. doi:10.3390/biology8030054 / Fischer D, et al. PLoS ONE. 2017;12(6):e0178782. doi:10.1371/journal.pone.0178782 ※調査が報告しているのは睡眠中央時刻の四分位(2:24/4:15)と自由な日の平均睡眠8.1時間です。そこから起床時刻に直す計算と、起きてから始業までに2時間かかるという想定は、当協会によるものです。この2時間を1時間半にすると46%、2時間半にすると74%になります。
出典: Roenneberg T, et al. Curr Biol. 2012;22(10):939–943. doi:10.1016/j.cub.2012.03.038 / Islam Z, et al. Sleep. 2020;43(1):zsz204. doi:10.1093/sleep/zsz204 / OECD Time Use Database(日本のデータは2021年調査、2024年6月更新). oecd.org/gender/data
いちばん怒られていた頃が、
いちばん夜型だった。
クロノタイプは、年齢によって集団の分布が動きます。子どものころは朝型で、10代に入ると急な坂を登るように夜型へ動き、10代の終わりごろ(米国の調査では女性18.4歳、男性19.2歳)に人生のいちばん夜型に達して、そこからゆっくり朝型へ戻っていく。年齢の違う人をまとめて調べた研究なので、同じ人を追いかけた変化ではありません。研究者たちはこの折り返しを「思春期の終わりを示す、最初の生物学的な目印ではないか」と提案しています。
この山が高くなっていく時期は、一日がいちばん早く始まる場所にいる時期と、大きく重なります。朝、起こされて、起きられなくて、怒られる。あの頃に怒られた覚えのある人は、人生でいちばん体が夜に寄っている時期にいました。
夜型は、一部の人の特殊な事情ではありません。
ほとんどの人が、人生のどこかで通ります。
寝坊を、個人の落ち度から社会の設計課題へ。
さっきのスライダーで起きたことが、当協会のやろうとしていることのすべてです。誰も治っていないのに、間に合わない人が減りました。動いたのは、線だけです。
読み込み中…
—人が、自然には間に合いません
0人。
誰も治っていません。
線が動いただけです。
みんな、自分の色に戻りました。
このとき、始業は —。さすがに行きすぎです。
けれど、9時を10時にするだけでも、間に合わない人は —人から—人になります。
かわりに、夕方が1時間うしろへ動きます。それが割に合うかどうかは、職場ごとに違います。
光の浴び方や生活の工夫で、体のほうが動く幅もあります。ただし報告されている差は数十分です。線を1時間動かすほうが速い、という比較の図だと思ってください。点は150人で、§03 と同じ分布から抜いています。線は「この時刻に起きられれば始業に間に合う」という目安で、起きてから始業まで2時間かかるという想定は、当協会が置いたものです。
これは机上の話ではありません。線が動いた場所と、線がいったん消えた年に、どちらも同じ向きの結果が出ています。
40か国の研究では、平日と休日の睡眠時間帯のずれ(ソーシャルジェットラグ)も、あわせて約30分縮みました。目覚まし時計を使う人も減っています。ただし延びたのは平日だけで、休日の睡眠はむしろ9分短くなりました。平日が休日に追いついた、という形です。
- 早起きを、指導しない。
- 生活改善を、求めない。
- 診断を、求めない。
外れ値を治療するのではなく、外れ値が外れ値でなくなるように、社会の前提を動かす。
活動
-
スリープコンサート
客席で寝ながら聴く音楽会。寝てしまってかまいません。むしろ、それが成功です。参加したい人が集まりしだい、ひらきます。
-
オーバースリーパーズ
協会のバンド。エレクトロニカとアンビエントの混ざったドリーミーな音像。演奏は、眠りに向かって設計される。
-
協会公式枕
協会が枕を作る。売り物にするかどうかは、まだ決めていません。
-
オーバースリーパー・フレンドリー認定
協会の背骨。眠る時間を働く人に返している会社を見つけて、名前を出す。表彰する側の制度です。
主張
-
「甘え」ではないことの、疫学的な説明
「甘え」という言葉に反論はしません。反論すると、性根の話になってしまうからです。かわりに、分布と、線がどこに引かれているかの話をします。
-
治らなくていい、という選択肢
「寝坊が治らない」と検索する人が本当に困っているのは、寝坊そのものではなく、寝坊が罰になる環境かもしれません。治すこと以外の選択肢について。
-
始業9時に、科学的根拠はない
なぜ日本の多くの企業は9時始業なのか。工場のシフト、鉄道ダイヤ、法律の書式。9時という時刻が科学ではなく歴史の産物であることを整理します。
-
遅刻を人事評価から外すべき理由
遅刻が測っているのは、仕事の質でも量でもなく、時刻との距離です。それを評価に混ぜると、評価そのものの精度が落ちます。会社を責める話ではありません。
眠くなったら眠る。
目が覚めたら起きる。
そんな社会へ。
朝が得意な人も、そうでない人も。誰も直さなくていい社会にしたい。当協会がやりたいのは、それだけです。
まず、スリープコンサートをやります。客席で寝ながら聴く音楽会です。参加したい人が集まりしだい、ひらきます。あなたが登録することが、そのまま開催に近づくことです。
客席で寝ながら聴く音楽会です。参加したい人が集まりしだい、ひらきます。参加は無料で、それ以外には何も起こりません。